(1)助成金とは
皆さんは助成金制度をどのようにお考えでしょうか?「事務手続きが煩雑で受給しづらいもの」・「どのような種類があり、どのようなときに受給できるかがわかりづらい」、このような意見が至るところで耳にします。そこで、皆さんの疑問に答えるためにひとつのエピソードをご紹介します。
(例)脱サラして飲食店経営された方のお話です。この社長は、飲食店を立ち上げの際に「健康・美容」をコンセプトとして経営されていました。
幸運なことに、たびたび雑誌に取り上げられ、売上も順調に推移してきました。そこで、「健康食品販売」という新しい事業展開を考えていたところに相談がありました。
この例では、「中小企業基盤人材確保助成金」の適用が考えられるわけです。そしてこのような助成金は、決して天から降ってくるような怪しいお金ではありません。理由は、毎年全国の会社が5月に支払っている労働保険料のうちの雇用保険料の一部がその財源となっているからです。
雇用保険の失業保険負担率は企業・従業員ともにほぼ同じですが、若干企業の負担の方が多めとなっております(業種によって異なります)。
助成金は、この企業と従業員の雇用保険率の差分を全国の会社から集めて雇用安定事業等として申請した事業主に対して助成金として支給しているのです。その意味では、助成金の受給は会社が全額負担で積み立てておいた保険料を返してもらうお金と言い換えることができるかもしれません。
中小企業のわが国における全事業者数の約99.7%を占め、全雇用者の約70%に就業の場を提供するなど、わが国の経済社会発展に欠かせない存在であります。よって、国は中小企業支援・雇用創出・人材育成・高齢者雇用など多くの助成金制度があります。
前記のエピソードには、「新規事業の展開」によって中小企業の発展さらには日本経済の発展が見込まれ、雇用機会の創出まで期待ができるのです。
「少子高齢化」のように、社会問題から助成金制度に繋がるものは数多くあります。制度の背景・国の強化政策を考えながら、助成金制度を理解してみるのもひとつの方法と言えるのではないでしょうか?
(2)助成金の種類
助成金の中には、過疎地域・農山村地域など特定の地域のみを対象としたものや、業種が限定されているものなどがあり、企業によっては活用できない助成金制度もあります。
しかしながら、助成金制度のほとんどが「中小企業支援」を主目的にしているものであり、一般的な企業であれば活用できる助成金の数は決して少なくありません。
助成金を目的ごとに分類してみますと、「雇用の維持等」・「新たな雇い入れ等」・「離職・再就職などの労働移動支援」・「創業」・「能力開発等」・「中小企業などにおける雇用管理改善等」・「育児・介護労働者の雇用管理改善等」・「建設労働者の雇用管理改善等」などが挙げられます。
また、分類した項目の中にも数種の助成金があり、支援内容・給付内容は明確に決められています。
(3)助成金を有効活用するには
助成金制度の利用・有効活用するにあたり、まず注意するのが「最初に補助金ありき」という考え方ではなく、社内の各種規定の運用を見直すキッカケとして考えていただくと言うことです。
要件を満たせるからと言って、きちんとした事業計画なしに受給してしまい、最終的に資金がショートしてしまう例も少なくありません。助成金本来の趣旨から言っても、「次のステップのための栄養剤」と言うのが正しい理解です。
経営者が企業の経営理念に基づき事業計画を立て、結果としてそれに合致する助成金を利用できたと言うのが助成金制度の最も効果的な有効活用方法です。このようにきちんとした目的を持って助成金を受給することで次のようなメリットを得ることができます。
①返済不要の資金の獲得
②事業計画の再確認の機会を得ること
③事業所の就業規則や帳簿等の整備
④助成金の受給の実績が公的融資についてもプラスとなること
しかしながら、助成金制度の正確な情報量は不足しているため、本来であれば利用できるところを申請していないケースが散見されます。
厚生労働省関連の助成金は、支給要件をすべて満たしていれば、原則として必ず受給できるので、ぜひとも活用すべきです。
申請手続きについては、比較的簡単で役所から届く案内や配布されている手引きに従って申請すれば受給できてしまうものから、非常に煩雑なものまで多岐にわたります。
したがって、簡単なものについては、自社で申請をし、複雑な申請手続きを要するもの、または申請が複数回にわたるものは専門家に委託することも考えられます。
助成金申請時の添付書類は、もともと社内で整備されるべき法定帳簿や就業規則などが求められます。これらが整備されていない企業は、
支給申請をする前に各種帳簿類を整備して提出することになります。特に法定帳簿(賃金台帳・出勤簿・労働者名簿)は、企業として当然に整備
しておく書類となりますので、常日頃の管理徹底が不可欠となります。
また就業規則等の整備も重要です。そして世の中には助成金を受給しやすい就業規則とそうでない就業規則があります。どちらの就業規則でも法的に問題はありませんが、せっかくですから「助成金を受給しやすい就業規則」を作成したいものです。助成金のうちいくつかのものは、就業規則を変更することにより支給されることになります。
たとえば「継続雇用定着促進助成金」は、原則として現在60歳の定年を定める企業が、65歳まで定年年齢を引き上げた場合や65歳までの再雇用制度を導入した場合に支給されますが、以前から65歳定年制を定めている企業は、助成金を支給する意味がないとみなされ、残念ながら支給されません。
このように、助成金制度は近年の雇用情勢の変化と深く結びついております。「助成金を受給しやすい就業規則」を作成するためには、雇用情勢を含む様々な社会問題に敏感になることが重要であるといえます
※詳しくは、笠原会計事務所まで、お気軽にお問い合わせください。
|